私がこれまでに読んだ本の中で、強く印象に残っている本のうちの一冊です。
人の心理に対して知的好奇心を強く持っている方にお勧めします。
この本の結論は、良い人生を送るためには、IQよりも、EQの方が重要なんだということです。
IQの”I”は、Inteligence(知能)のことで、IQとは知的能力、頭の良さを示しています。
それに対して、EQの"E"は、"Emotion (感情)”のことで、「感情をコントロールする能力」というような意味と捉えれば良いでしょう。
つまり「良き人生には、頭よりも心が大切」という結論であり、実は様々な小説や映画のような物語の中で繰り返し述べられてきた普遍的なメッセージのようにも思われます。
しかし、この本の優れている点は、主観的な物語ではなく科学的な根拠に基づいて主張している点です。
科学的根拠には2種類あって、一つには心理学実験、もう一つは脳に損傷をうけた人の事故事例です。
心理学実験としては、例えばマシュマロテストが紹介されています。
子供の前にマシュマロを1つ置いた状態で大人がいなくなって、大人が戻ってくるまで食べずに待つことができれば、2つ追加で合計3つもらえる約束をして、子供を観察するというものです。
また、さらに無事に我慢できた子供と、我慢できなかった子供とのその後の人生を比べるとどのような傾向があるかを経過観察しています。
心理学実験としてはかなり有名な実験です。
また、脳に損傷を受けた事例としては、例えば、事故によって感情を司る脳の一部が損傷した人が、事故の前と後とでどのような変化を起こしたかを紹介しています。
これによって、感情というものが人間にとってどのような役割を果たしているかということを明らかにしています。
上記を一例として、『EQ』は、様々な心理学実験と事故事例を紹介して、心や感情の受容性を明らかにしています。
かなり興味深い本で、出版当時はベストセラーでした。
ただ、現在では内容的に古くなっているのも事実で、現在ではマシュマロテストの結論は修正されていますし、脳の機能の研究はMRIを用いて行われるようになって、偶発的な事故に頼るような方法はとっていません。
しかし、それでも依然として、EQがIQより重要であるという結論が動くものではありませんし、今読み返していても、依然として面白い本です。
心理に知的好奇心が強い方に対して、私が一番最初に推薦するのは『EQ』で決定だと思っています。
ただし、この本はページ数が多くて、学術性がやや高めです。
今現在、何かに悩んでいて、解決したい問題を持っている方には、この本ではないかなと思っています。
そういう方には、もっと簡単に読めて、単純なノウハウが掲載されている本が良いでしょう。
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