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  • 執筆者の写真北林陽児

松本人志事件:トラウマを解説

今日は、少し下世話な話を書いてみましょう。


松本人志さんの不倫?性加害?の問題についてです。


文春の第一報からしばらくしてから、松本人志さんは事後の女性からの御礼メールを「ついに出たね」と指摘しました。


松本さんとしては、この御礼メールを同意の証拠として捉えているわけですが、各方面からそれは同意の証拠としては成立しないという指摘されています。


「この種の犯罪の被害者は、自分を守るために加害者に対して迎合することがしばしばある」という議論です。


心理療法の専門家として、この点について少し詳しく解説してみようと思います。


このような行動は、トラウマのメカニズムを知ることで理解することができます。


トラウマというのは、精神的な衝撃の大きい出来事が起きた際に、その衝撃から自分の心を守るために、感情をマヒさせることによって生じます。


出来事自体はあったけれども、感情的にはあたかも何もなかったかのような心理状態を作り上げて、平静を保つわけですね。


しかし、それでは正常な感情の処理を棚上げすることになるので、心の奥にその感情が生々しく生き続けることになります。


そして、時に応じてその感情が生々しく再現されてパニックになるようなことを、フラッシュバックと言ったりします。


このように、トラウマという心理メカニズムは、危機に際して正常な心理状態をムリヤリ維持することが目的で、フラッシュバックなどのPTSD症状は副作用とも解釈できるわけです。


ちなみに、この平静な心理状態というのは、私も体験したことがあります。


私は、大学受験に向けて高校1年の頃から毎晩2時まで勉強の努力をしたのですが、センター試験当日に受験科目を間違えるという失敗をしました。


当時、3年間も命を削って取り組んでいたので、それこそ精神破綻をきたしそうな出来事だったのですが、極めて清明な精神状態が維持されたことがとても印象的でした。


この清明な精神状態によって、残りの科目を普通に受験することができたわけです。


松本さんの件の女性にも同じ心理メカニズムが動いて、清明な精神状態になっていれば御礼メールも送れる、いや、当然送るだろうなと思います。


特にパーティ終了直後の御礼メールで「幻のように希少な会」と表現されいて、パーティを「幻」と感じられるほど、清明・平静・正常な精神状態になっている感じが伺えます。


パーティ直後の興奮が続いていれば「幻」とは感じず、自分があまりにも清明な精神状態になっているからこそ、パーティが幻だったように感じられるわけですね。


私の体験の場合にも、幻なのは、試験での失敗なのか、清明な精神状態なのか?どっちなのだろうか?というくらいの不思議な感覚を今でも覚えています。


また、今回の女性について8年も経ってからグズグズ言い出すのはどうなのか?という議論もあります。


いやいや、トラウマってそういうものですからね。その心の傷を癒すには10年20年というか、一生かかるという時間が必要なわけです。


その間、心の奥には大きな傷として残り続けて、日常生活の様々な場面に影響を及ぼします。


トラウマの問題を解決するためには、ムリヤリ誤魔化してでっち上げた清明な精神状態から自ら抜け出して、本当の気持ちと向き合わなければなりません。


そのプロセスに8年の年月がかかるというのは、珍しくないというか、当たり前というか、むしろ早めともいえるわけです。


私だって、件の大学受験での失敗問題を解決するまでには、15年近い時を要しました。


その女性の8年にしろ私の15年にしろ、その間ずっと苦しみ続けることで人生が大きく歪むこととなります。


ましてや20代の若者にとって、8年であれ15年という時間は極めて重大な意味を持っているわけですね。


従って、松本人志の件での8年という年月は、精神的な苦痛が継続していたという意味で「被害の延長線上」であり、事件の出来事そのものだけでなく、以後の8年間の苦痛も含めて、松本人志が補償しろと私は思うわけです。


御礼メールが同意の証拠だとか、8年前のことを掘り返してグズグズ言うなみたいな言説もあるわけですが、そういう言説と松本人志の両者に対して「もう時代遅れですよ」と静かに言い渡したいです。

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